歯型とるのって簡単だと思ってる?
歯医者での型取り苦手な人多いでしょう。
たまにね、上手くいかなくて取り直しお願いする時は本当申し訳なく思ってます。
前に旦那と型取りの話になった時にちょっとビックリしたんですけど、どうやら旦那は型取りって誰でも簡単に出来る作業だと思っていたらしい。
私、歯科衛生士歴10年近くになりますが、いまだに型とる時に緊張することあります!
型取りってピンクの柔らかいのをトレーにペタペタ盛って口に入れて押し込んで固まったらハイお終ーい!って単純なものじゃない、というのを少しでも理解して頂きたい。
練るのが難しい
型とりに使う材料を印象剤っていいます。
一般的によく目にするのはピンク色のやつだと思います。
あれは粉と水を適量混ぜて柔らかい粘土のような状態にするのですが、まずはこれが難しい。
ある程度経験を積めば難しいことはないのですが、学生や新人はまずこの段階から訓練です。
教科書には粉と水を計量して混和すると書かれていますが、そんなんじゃ臨床に出てやってけないよ。
印象剤は粉と水を合わせて練っていくと段々硬化していくのですが、気温や湿度により硬化時間が違います。
湿度高い、温度が低い=硬化が遅い
湿度低い、温度が高い=硬化が早い
季節の変わり目、急に暑くなった日にいつもと同じ感覚で印象剤練ると思った以上に硬化が早くて慌てることがあります。
そこで暑い日は冷蔵庫で冷やした冷水を使ったり、水の分量を多めにしたりして練り方を調整するわけです。
その調整が新人の内は難しい。
新人の内は練った印象剤の気泡を抜くのもトレーに印象剤を盛るのも遅いのでモタモタしている内に硬化が進みゴム状になってしまい患者さんの口に入れようとした時にはもうアウトだったり。
逆に早く固まってしまうのを怖れて水多めで柔らかく練りすぎると中々固まらず患者さんに苦しい思いをさせたり、ゆるゆるの印象剤が喉の奥に流れてしまったり。
何の型をとるか、どんな人の型をとるかによって難易度が違う
型取りの難易度って全部一緒ではない。
部分的な詰め物なのか、歯全体を覆うタイプの物なのか、何本か連結してきる物なのか、入れ歯用の型なのか。
または、上の歯なのか下の歯なのか。
子供の型をとるのか、唾液の多い人の型をとるのか、嘔吐反射の激しい人の型をとるのか、舌の大きい人の型をとるのか。
まぁ色々と挙げればキリがありません。
私は舌の大きい人、舌圧の強い人の下の奥歯の型取りが苦手です。
型を取りたい歯に舌がピタッと密着しているのを押さえて、頬の粘膜が歯に当たらないように引っ張って、唾液が多かったら吸って乾燥させて…
1人では無理だなと判断したら手の空いているスタッフに助っ人を頼んで頬を引っ張って貰ったり唾液を吸って貰ったりします。
嘔吐反射が強い人の型取りも緊張します。
我慢できず嘔吐してしまったものを手で受け止めたことも何度かあります。
嘔吐してしまったものの処理は何とも思わないのですが、涙目になっている患者さんに取り直しをお願いするのが申し訳なさすぎたり、患者さんの緊張感が伝わってきてこっちまでビクビクしてしまいます。
入れ歯の場合は粘膜やヒダの形態までしっかり型が取れてないといけないので印象剤を盛る量、トレーの挿入の仕方、圧接の仕方にコツが要りますし、お年寄りは口が大きく開かない方も多いのでこれまた大変。
子供の場合は早く硬化するように調整して練るのですが、印象剤準備して子供の元へ戻るとブクブクうがいしてたり、椅子から降りて遊んでたりして
「大人しく座って待っとらんかーい!
固まってしまうやろ!!!!」
と叫びたくなるのでお子さんの付き添いの方はどうぞよろしくお願いします。
だから大目に見てね!という訳ではないけれど
まだまだ挙げればキリがないのですが、型取りって中々難しいってとを少し理解して頂けると嬉しいです。
だから失敗しても許してね!という訳ではありませんが、簡単な作業を適当にやって失敗したって訳ではなく、真剣に色々考えながらやっていますよ、と言いたいのです。